11月22日に開催するオンラインイベントのゲストのお一人、東 嗣了さんの専門分野である「バイオミミクリー」。イノベーション創出の文脈で度々登場するこの手法について、その奥深い世界を東さんの視点から覗いてみましょう。
そもそも、バイオミミクリーとは?
「バイオミミクリー」という言葉から、カモノハシのクチバシを模倣した新幹線や、鳥の翼を応用した航空機など、有名な事例を思い浮かべる方も多いかもしれません。
バイオミミクリーは環境への負担が少ないと考えられていますが、自然を模倣すると、何故環境負担が少なくなるのでしょうか?
例えば、先に紹介した航空機の例では、機体の翼や飛行方法を、鳥が翼を動かすメカニズムに近づけることで、最小限のエネルギーで飛行することができます。
ほかにも、積水化学工業が開発したエアリーシェードは、木陰の仕組みを模倣することによって、夏季の遮光率、冬季の採光率を従来品から改善することに成功しました。メンテナンスコストや電気・水のランニングコストもカットできるため、エネルギー負荷も軽減。
このように、生物が長い時間をかけて創り出してきた無駄のない設計を、人間が生み出すプロダクトにも省エネルギーシステムとして応用できるのです。
ただ形を模倣して人間の利便性を実現するだけではない。「共生」デザインへの応用
上記のようなバイオミミクリーの概念を更に発展させ、東さんが取り組んでいるのが、生物の形状を模倣するだけでなく、より広い生態系の繋がりを新しい社会システムの構築へと応用すること。社会課題と自然がもつ知恵を結びつけてイノベーションを生み出すというフレームワークです。
東さんは「自然を大切にする」という、「自然」と「人間」を異なる主体として捉えるのではなく、「人間は自然の一部である」というマインドを持った上で、考え方や向き合い方そのものの変容を追求しています。
目指すのは、自然の中でお互いを尊重した環境・社会システムを人間が共創すること。利益を求める人間視点を超えた次元で、自然のメカニズムから多角的なアプローチを生み出す作業に重きを置いています。
例えば、東さんが今のプロジェクトで取り組んでいるのは、害虫を「駆除」するのではなく、「住み分けて共生」するための新しいアプローチ。自然を守るために人間と切り離すのではなく、本当の意味での自然と人間の共生・共創を目指します。
理想と現実のすり合わせのため課題は多く残りますが、このようなアプローチを模索すること、問い続けることでしか、不確実な未来を形づくることはできないのではないのでしょうか。バイオミミクリーは、この答えのない営みの補助線として、38億年もの間進化を続け、生き残ってきた自然の歴史を活かす可能性を見出しているのです。
サステナビリティの時代が終わり、リジェネレーションの時代がくる
回復不可能な自然資本があるため、サステナビリティ=環境保護 / 維持だけではもう間に合わないことを指摘する東さん。人類自身が新たに「再生」しながら繁栄していかなければ、本当の意味で持続可能な社会を作り出すという目標を達成することはできないのです。
「再生」の手段の一つとして、無限の可能性を秘めるバイオミミクリー。38億年の時を超えて再生し続けてきた自然から、創りたい未来を実現するヒントが見つかるかもしれません。
今回ご紹介した東さんの登壇するオンラインイベントは11月22日開催!(アーカイブ付)
お申し込みはこちらから:https://greenshift-s2-preevent.peatix.com/view